東風窯(前篇)

商品の知られざる裏側をお届けする連載企画『生産者の想い』。
記念すべき第1回目は、唐津焼窯元「東風窯」の中村恵子さんです。
割竹式の登り窯しか使わない!?
大変なのはロクロ成形ではない!?
前篇では、唐津焼や登り窯について初心者の方にも分かるように解説していただきました。

Q唐津焼の起源を教えてください。

 唐津焼の起源はさだかではありませんが、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、連れ帰った朝鮮陶工が大名の保護のもとに焼き始めたという言い伝えがあります。
 前提として、有田焼などの磁器は石ものである一方、陶器の唐津焼は土ものです。土もの自体は室町後期から作られていましたが、絵を描いたり、釉薬を塗ることはやはり朝鮮渡来のものだと言われています。

Q唐津焼にはどんな種類がありますか?

 唐津焼は、水差し、茶碗、茶入れなど茶道に使うものが多く、日用雑器はあまり多くありません。しかし、最近は茶道自体が廃れてしまっているので、日用雑器を作ることがほとんどになりました。
 唐津焼には朝鮮唐津、絵唐津、粉引など色んな種類がありますが、基本的に絵付けは草紋や垂れなど、形は轡型や片口など、デザインや形は大体決まっています。しかし、最近は自分で考えてデザインし作ったりもしています。

Qなぜ割竹式登り窯を使用しているのですか?

 焼き物を始めた時から、窯は登り窯しか使わないと決めていました。登り窯にも様々な形がありますが、唐津焼の起源としては北波多という村に割竹式(竹を半分に切った形をした屋根)の登り窯が開かれたことが最初の起源と言われているので、割竹式に決めました。
 メリットは唐津焼の良さが一番表れやすいことです。土ものはカビが生えやすいですが、割竹式登り窯の場合は窯の傾斜が高いため、温度が上がりやすく冷めやすいという特徴があります。そのため、灰が被りやすいだけでなく土が締まりやすく、釉薬も自然な感じに密着しやすい。本当の唐津焼と言えば割竹式登り窯だと思っています。ガス窯との違いは、もう作品を見た感じで分かります。

Q登り窯の大変なところは?

 一番大変なのは、薪の確保です。以前は赤松の割れ木を使うことが多かったのですが、日本全国の松枯れによって赤松が手に入りにくく、杉や樫など雑木を取り寄せて使用し、最後の締めだけは赤松という風に工夫しています。

 土作りも大変で、唐津の土を専門に扱っている業者の方に、それぞれの釉薬に合う土を依頼しています。釉薬も全て自分で作っていますので、これもまた非常に時間のかかる作業です。
 唐津焼の仕事工程が100だとしたら、ロクロ成形は30で、後の70は土作りや釉薬作りに費やしています。体力、労働力。唐津焼は美しいけれども、内実は土木作業みたいな仕事かなと思うんです(笑) それでも、最近は若い方や女性の方も多くなってきています。

Qさがレトロ館でも使用している、一輪挿しについて教えて下さい。

 これは南蛮渡来の南蛮唐津で、備前の焼き締めと同じように釉薬をかけていません。焼き締めで内薬もしていないので、漏れ防止のためにもきめが細かく鉄分が多い土を使用しています。その分重量が割と軽めに仕上がっています。また、窯の中で飛び散った松の灰を被っており、同じ窯の中でも置く場所によって出来が異なってきます。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

おまけ

 他の窯元よりも傾斜がある東風窯の登り窯には1,2,3の窯があり、それぞれ役割が違う。簡単に説明すると、1の窯では酸化焚きを行い、朝鮮唐津や黒唐津を作る。湿気を抜いて乾燥させるために、焚口から薪を入れて、ロストルで空気を調節しながら胴木間で1000°まで温度を上げる。2の窯では還元焚きを行い、絵唐津などを作る。空気を入れない状態、つまり燃え尽きる前に薪をどんどん入れていくので、お気が貯まっていく。3の窯では、以前は焼き締めや南蛮唐津を作っていたが、最近はその2つがあまり好まれないがゆえに現在は作っていないという。最後は高さ1mの煙道を通ってお気が抜けていく、という構造である。
 
 温度が上がりやすく冷めやすい割竹式登り窯の焚き方は非常に難しい。その分、当たり外れも激しい。それでも中村さんの登り窯への想いは強い。「どっちをとるかって言ったら、もう外れても当たりがちょっと取れた方がいい。でも生産性は高くはないですね。いいものをやっぱり提供したいという思いですよね。」
 

 温度管理にはデジタル温度計も活用している。しかし、最終的にはあまり当てにならないと言う。「温度の上がり方だけは管理できるけれども、最終的に火を止めるのは自分の目、自分の勘ですね。」中村さんのお言葉一つ一つに職人の風格を感じた。

次回後篇では、中村さんご自身の体験談や今後の展望について語っていただきます!

ご一緒にいかがですか?